●マルオカ君の脱退と、タケムラ君、サワヤナギ君の加入を発表してから2ヶ月を待たずして、7曲入りの新音源『ロックンロールドリーマーズ』が完成しました。
ヒジカタ(Vo&G):新体制の発表は、ホント急に決まったというか、2人に正式なメンバーになってもらったのは、つい先日のことなんですよね。ただ、今年の6月ぐらいから、ライヴと制作は、もうずっとこの4人でやっていて。僕らは基本的に、ライヴをやっているそのままの感じで、レコーディングしたいほうなので、そこは自然な流れやっていたんですけど。
●加入当初は、いろいろ苦労もあったのでは?
ヒジカタ:そうですね。また人が入れ替わって、イチからアンサンブルを組み直す感じでやっていたので。ただ、この4人になってから、出番の前に、ステージ袖で円陣を組むようになったりとかして。
ニシバタ(Dr.):そうだね(笑)。
ヒジカタ:だから、僕と(ニシバタ)アツシがオリジナルメンバーやからっていう感じではなく、ステージの上では、もう全員が同じ立場やっていう気持ちで、ずっとやっていて。それがだんだん、バンドとしても固まってきた感じですね。
サワヤナギ(G):というか、円陣組もうって最初に言い出したのは、(タケムラ)カズキ君だからね。 タケムラ(B):そうやな。
サワヤナギ:当時はサポートだったのに、「円陣組もうよ!」って言ってきて(笑)。
ヒジカタ:(笑)。だからホントに、オリジナルとかサポートっていうの関係無く、目の前のライヴに集中するというか、そういうメンタリティで、ずっとライヴはやってきたんですよね。
●ただ、ライヴはともかくとして、制作となると、やっぱりこれまでとちょっと違ったのでは?
ヒジカタ:そうですね。ただ、マルケン君が2月に怪我をしてから、僕とアツシの2人しかいなかったわけじゃないですか。で、2人でスタジオに入って、楽曲制作をしてみたりもしたんですけど、あんまり上手くいかなかったりとかして。だけど、カズキ君が入って、とりあえずベースを弾いてくれるようになってから、すごいスピードで曲ができるようになったんですよね。
●なるほど。
ヒジカタ:それまでは、サポートでいろんな人が入れ替わりで入ったりしていたから、その人たちとリハーサルをするのに精一杯だったところもあって。それで、楽曲制作のほうが、ちょっと滞っていたんですけど、そこから解き放たれるように、ブワーッと曲ができてきて。今回のミニアルバムは、その勢いのまま、すごいスピード感で録った感じなんですよね。
●具体的には、どんなことを考えながら、この4人で制作をしていったの?
ヒジカタ:今回、新曲のアレンジをするにあたって、昔の自分たちの音源とかを、みんなでめっちゃ聴きながら、「ドラマチックアラスカって、そもそも何やったっけ?」っていうのを確認し合ったんですよね。いろいろ人が入れ替わったりしているけど、ドラマチックアラスカのアイデンティティみたいなものって、何だろうっていう。それをもう一回、見つめ直したというか。
●ドラマチックアラスカのアイデンティティというと?
ヒジカタ:うーん、何やろな。とりあえず、何かよくわからない大きいものを守らないといけないって思ったんですよね。メンバーが2人入れ替わって、外から見たらすごいグラグラしているように見えるだろうし、それが嫌やったら、このタイミングでバンド名を変えても良かったと思うし。ただ、それでもドラマチックアラスカとして続けていくなら、やっぱり今まで作ってきたものを、もっかい見つめ直して、それを踏まえた上でやるべきやなって思ったんですよね。
●新体制の一発目の作品ではあるけれど、これまでのものをパワーアップさせた形で、さらに前に進んでいくことを選んだというか。
ヒジカタ:そうですね。実は、この機会に新しい挑戦をするべきだっていう意見もあったんですけど、このタイミングでそれをやってしまうと、ホントにブレてしまうというか、それは危ないかなっていう思いが、僕の中にはあって。だから、今回一曲目に入れた「TEPPEN」という曲とかは、まさにそういうことを歌った曲というか、今の僕の気持ちを正直に綴った歌になっているんですよね。
●<TEPPEN超えてやんよ>という、これまで以上に強気な歌詞が印象的な一曲になっているけど。
ヒジカタ:その曲は、歌詞のディレクションとかも受けずに、もうホント、僕のやりたいように書いた歌詞になっていて。というか、僕が思うドラマチックアラスカのメンタリティっていうものを、全部そこに詰め込んだ歌になっているんですよね。
サワヤナギ:その「TEPPEN」という曲が、この4人になってから、いちばん最初に録った曲なんですけど、ヒジカタ君の「テッペン取るぞ!」っていう意気込みに、僕もちょっと感化されるところがあって。6月から一緒にライヴをやってきているわけですけど、一緒にやりながら、僕自身もそう思えたからこそ、正式に加入することを決めたわけで。やっぱり、いろんなことがあって、それを乗り越えてきたバンドだからこその意気込みみたいなものが、このバンドにはあると思ったんですよね。
ヒジカタ:そう、サワヤナギ君も、今年の3月に、前のバンドが解散して……あとカズキ君は、4人の中で最年長やったりする中で、このバンドに入ることを決断してくれているから。その責任感というか、僕らに未来を託してくれているっていう責任に、加入が決まってから3日間ぐらい押しつぶされそうにはなっていたんですけど(笑)。
タケムラ:でも、僕らからしたら、逆に僕らがドラマチックアラスカを押し上げていくぐらいの気持ちで、加入を決めたところがあって。だから、2人に頼るっていう感じでは全然なく、自分発信でドラマチックアラスカを、どんどん押し上げていこうっていう。そういう感じなんですよね。
●なかなか気合いが入ったメンバーが集まったみたいだね。
ヒジカタ:良かったです(笑)。でも、だからこそ、「TEPPEN」という曲では、本当のことを歌いたかったんですよね。いろんな現実を突きつけられたり、ずっと続くと思ってたことが続かなかったり、何かいいことばっかりではないというか、やっぱり現実っていうのは、綺麗事だけではないんですよね。だからこそ、本当の気持ちを歌いたかったというか。
●というと?
ヒジカタ:たとえば、別にナンバーワンにならなくても、特別なオンリーワンになればいいとかって言うじゃないですか。で、そう言われたら、何か救われるのかもしれないけど、それが本当にいいわけじゃないじゃないですか。絶対みんな、ホントはナンバーワンがいいと思っていると思うんですよね。少なくとも、ドラマチックアラスカという名前で続けていく以上は、やっぱりそういうメンタリティでいたいっていうのがあって。だから、ちょっとドキッとするようなタイトルと歌詞を書いてみたっていう。
●そんなヒジカタ君の思いを反映してか、この「TEPPEN」という曲は、アレンジもかなり荒ぶった、すごく勢いのあるものになっているよね。
タケムラ:そうですね。やっぱり、この曲は、僕がアラスカに入ってから一発目の曲だったので、久しぶりに初期衝動に駆られて弾いたところがあるというか。もう、思うようにやらせてもらった感じですね。
サワヤナギ:うん。アラスカらしさもありつつも、かなり自分らしさも出せた一曲になっていると思います。
ヒジカタ:そう、僕らの昔の音源とかを、2人がめちゃめちゃ研究してくれて……でも、ちゃんとそこからまた、新しいものが生まれているというか。2人が自分らしくやれるっていうことは、ドラマチックアラスカにとっては、新しさになるんですよね。そういう意味で、それぞれの自分らしさっていうものをちゃんと入れ込んでくれたので、すごい良い音源になったと思います。
●新体制の一発目だからといって、何か置きにいっているようなところはなく、むしろ4人全員が、それぞれ攻めているというか。
ヒジカタ:そうですね。ここからまた始まる感じがするというか、ちゃんとこれからのことを期待してもらえるようなミニアルバムになったと思います。
●そんな勢い溢れる「TEPPEN」以外にも、前作の「ニホンノカブキ」のような遊び心を持った「チャイニーズパッション」や、「TEPPEN」とは違った意味で、今の自分たちの決意表明となっている表題曲「ロックンロールドリーマーズ」など、楽曲のふり幅は、結構広いよね。
ヒジカタ:そうですね。「ロックンロールドリーマーズ」は、自分的にもめちゃめちゃ良い曲ができたなって思っていて。あと、今回初めてインスト曲が入っているんですけど、それも4人そろったからこそ、できたことではあって。とにかく、4人そろったっていう安心感というか、とりあえず4人でスタジオに入ることができるので、曲が形になっていく速さが、これまでとは全然違うんですよね。だからこそのふり幅やと思うし……そこは、僕ら自身も、すごく楽しみなところではあるんですよね。
●いろいろと状況が変化する中、ひとつ形のようなものは見えてきたと。
ヒジカタ:さっき言った、ドラマチックアラスカの大きいものっていうのは、ちゃんブレずに守れたと思うし、その中で、たくさん新しいこともやれたミニアルバムになったと思うんですよね。だから、まだまだ新章のプロローグというか、どんな人が聴いても、ちゃんと安心してもらえるというか、将来に期待をしてもらえるような作品になったんじゃないかなってと思います。
ニシバタ:そうやって、ドラマチックアラスカらしさを守ることができたのも、自分たちが作ってきた曲を客観的に見て、これまで自分らが何をしてきたかっていうのを、ちゃんと考えられるようになったからだと思うんですよね。だからこそ、制作スピードも速くなったというか、良いものがどんどんできるようになってきて。そういう意味では、ここからまた前に向かって進んでいけるなって、自分たちでも実感できるようなところはありましたね。
●新加入の2人は、どうですか?
サワヤナギ:僕がドラマチックアラスカに参加して、結構すぐに制作が始まったんですけど、全然この4人で行けるぞっていう音になっているなって思って。「TEPPEN」は、そういう決意がモロに出ている曲だと思うし、インストの曲とかは、4人で「せーの」で録ったんですけど、それはやっぱり、ツアーを一本一緒にまわったからこそ、できたことだと思っているんですよね。だから、正式メンバーになったのはホント最近なんですけど、ちゃんとドラマチックアラスカのギターとして音を出しているなっていうのは、自分で聴いて改めて思いましたね。
●なるほど。タケムラ君は、どうですか?
タケムラ:とりあえず、良い作品ができたなって思います。
ヒジカタ:それだけ?
●(笑)。
タケムラ:や、このバンドは、やっぱり人間性がいいんですよね。僕がここに入った理由は、もう人間性がいちばんでかいですから。やっぱり、一緒に楽しくできることって、バンドをやる上で、すごく大事だと思うんですよね。そもそも、人間性が合うか合わないかっていう。そういうところで、ええなって、僕は単純に思っているんですよね。
ヒジカタ:カズキ君の意味わからんボケも、みんなちゃんと拾ってくれるもんね(笑)。
タケムラ:意味わからんことあるかい。
●そういう立ち位置なんだ(笑)。
ヒジカタ:(笑)。何かこの4人は、ホントにバランスが良くて……僕が割とやりたいことをガーッてやって、それをアツシがちゃんと下処理をしてくれて、それをサワヤナギ君が技術的・音楽的なアプローチに変えてくれて、カズキ君がただふざけているっていう(笑)。何かピリピリしているときとかは、カズキ君がいらんこと言って、その緊張を解いてくれるんですよね。
●なるほど(笑)。
ヒジカタ:そういう意味でも、すごく良いバランスの4人が集まったなっていう感じはしているんですよね。まあ、今はまだちょっと僕自身、気を張っているところがあるんですけど、ここからまたどんどん自由になっていくというか、この4人だからこそやれることも、きっと増えていくと思うんです。だから、ここからまた一個ずつ、ライヴや音源を誠実に積み上げていくというか……今回のミニアルバムは、それがちゃんと証明できるような作品になっていると思うんですよね。なので、ここからまた期待しつつ、応援していただけたらなって思っています。

Writer / 麦倉正樹

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